冬の日の教室の中で勉強し靴とズボンの間が寒い
(上村駿介)【短歌人1月号 会員2 94頁】
上の三句が説明的だと思うが、「冬」「教室」「勉強」をもう少しすっきりと表現する案が今は浮かばないので、もう一つのことを指摘する。
三句目の「勉強し」の「し」。この「し」はやや過去だろう。下句「~寒い」は、まさに現在で、つまり、この歌にはふたつの時間があると読める。
「勉強し」ていたすこし前の出来事と、現在の「~寒い」状態と。
この歌の場合には、この時間のズレは少し邪魔に思える。
今まさに勉強していて、今まさに寒いのだ、という時間の提出の仕方のほうが、よい。
ある出来事があって、その結果こうなっています、というのは説明的で、動きがない。もう結果が出ているのだから。
しかし、今まさに生成しつつある時間が歌われていれば、歌われない、歌のその先の時間に、何かざわめきを、動いていくものを残せる。
ちなみに、このとき残せる何かは、「余韻」ではない。
と、思うところはあっても下句の「靴とズボンの間が寒い」は、注目したい。
寒さをどのように表現するか。もちろんそれはただの「寒い」ではまずい。
「寒い」を分解して、感覚の焦点を合わせなければいけない。
靴とズボンの間が寒い
ピタリと合ったと思う。
比喩でないところがいいし、共感できる。
この歌の読みどころです。
0 件のコメント:
コメントを投稿