短歌人を読む

結社誌「短歌人」に掲載された歌を読んで感想を書きます



2010年9月10日金曜日

プラトン

プラトンの霊魂の不滅をとく教授死別のひとよ音沙汰もなし
(佐々木幸子)【短歌人 9月号 会員2 90頁】

短歌には、その人の生き方というか人生というか、とにかくその人なりのものが出てくる。
この歌が作られるためには次の条件が満たされていなければならない。
  1. プラトン哲学の講義を受けている。
  2. 身近にいた人と死別した経験がある。
  3. 短歌を作っている。

同じ一連には次の歌もある。
小論文面接とほり短大に社会人入学許可されたりき

普通の大学生であれば、おそらくは両親は健在であり、友人らも若く、「死別」という経験はほとんどないだろう。
つまり、普通の大学生では、プラトン哲学の講義を受けている最中に、「死別のひとよ音沙汰もなし」という思いを抱えることは、ないことだ。
逆にいえば、老年にさしかかり、「死別」も経てきた人がプラトン哲学の講義を受けている、というのもあまり想像できないことである。
しかし事実、作者はこのような人生を今、送っている。
この歌には、作者の人生の厚みと作者の歩んでいる作者だけの人生の匂いがにじみ出ていると思う。
空想や想像ではこの場面は作れない、歌えない歌だ。
この歌は、そこがとても良い。

また「死別のひとよ音沙汰もなし」は、ごく自然に心の内から出てきた思いだとおもう。
普通であれば、死んだ人からは連絡が来ないと納得して、みんな生きている。
だが作者は子どものように、そういうふうに思った。
この素朴さはひとつの資質だろう。

常識的に考えられないことは社会生活を営む上では困ったことだが、文学をやる上では光となる。






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